デジャ＝ヴュ
螢子ちゃんの為に新しく手に入れたブラウスが可愛らしかったのですが、腰から下にも何か組合せて着せないとお人形といえど生活が送れません。
その下半身のアソートに１ケ月程も悩むことになりました。
これがその問題のブラウスです。アゾンの１月の製品でフォーリビング「コロニアル風ブラウス」のブラウン色です。
実はこの製品は１月の15日や27日の更新分トップに登場した、貴更が着ているハデ柄ブラウスと全く同形のものです。貴更の場合のボトムは昨年11月のアゾンフォーリビング「フレアータックスカート」でブラウスの裾を下にして腹部から締め上げ、貴更らしいカッコ良さが出せたと思うのです。
問題は螢子ちゃんの方です。
腰から上を見ると、濃い色で袖も細く、華奢な感じが強調されています。
このブラウスは下まできっちりボタンが付いていて、裾の方が朝顔の花のように開いています。
貴更の着こなしではスカートで押さえこんで、ブラウスのこの裾の広がりを殺しています。
螢子ちゃんは、この裾の広がりを活かして可愛らしさを見せたいと思いました。
このブラウスは上半身を見るだけなら螢子ちゃんにピッタリなので、ぜひ似合うボトムを合わせてあげたく思いました。
裾を外に出す条件の元に、手持ちのさまざまな色、柄、シルエットのスカートやパンツを取っ換え引っ換え着せて試してみました。
これは初期の試行錯誤の組合せの中のましな方ですが、まだまだダサいです。
上と下で雰囲気が違ってしまい、ぎこちないです。スカートそのものの作品として出来はいいのですが、合っていません。
実は、このスカートも「これなら」と買ってきたものですがしっくりとは合わず、嘆息しました。
悩んだ揚げ句、秋葉原のアゾン・レーベル・ショップに行きました。ここのショウィンドウには新作を着こなした人形モデルが沢山展示されているので、参考にしようと思ったのですが・・・
これはしたり！ このコロニアル風ブラウスを着た展示例がないではありませんか。もしやアゾン自身にも合わせるボトムが見つからなかったのではないでしょうか。
女性の場合なら十代以前の本職少女の時代から、自分で服の着合わせのセンスを養ってきたので、トップに合わせるボトムは何がいいか長年育てた感性で見分けられるのだと思いますが、男の私がいい歳になって少女人形に目覚めて少女ファッションに関心を持っても、感性がついて行けません。
て言うか、自分自身の男性ファッションにもロクに人並みの関心を持たずに過ごしてきました。（それは自業自得）
女性向けワイドショウでピーコ氏というファッション評論家が街頭の一般人のファッションを、こうしたらいいとアドヴァイスをくれる番組があるそうですが、人形ドレスにもそういったアドヴァイサーがいないものだろうかとまで思ったものです。
（もっともその番組ではアドヴァイスするだけで、「使用前、使用後」とアドヴァイス実施の改善事例までを見せるものではないそうです。それでは言い放題なので、やや説得力に欠けます）
ただ、このスカートで白を選んだことは適切な方向をむいていたようです。ブラウスの袖、襟の白の縁取りと対応したことに何か法則じみたものがありそうです。
それで、思い切って白い革製ショートパンツを履かせてみました。
異世界が開きました。（笑）
実は悩んでいる時に人形趣味の女性のかたに相談したところ、王子様みたいなのはどうか、とのイメージの方向をアドヴァイスしていただきました。
私もこのブラウスを着せた時、その細く腕にフィットし上半身を引締めるシルエットに思わず「少年」という言葉が浮かんだのです。これは感性の言葉でした。でもその後すぐ、「でも螢子ちゃんは内気な女の子だしなあ」との理性の言葉が出てそれを抑えてしまっていたのです。
ちょっと前の1/27 の更新の時にも、絶対にこのドレスは螢子ちゃんには似合わないはず、というアダルトなＡラインのドレスを面白半分に着せてみたところ、とんでもなく似合ってしまい見事な女主人（ミストレス）になったことに仰天したばかりだと言うのに。（これは別のところで「未亡人は幼妻」という、これまた私の感性からは出ない凄まじい感想をいただきました）
「この子はこういう子なんだから」と決めつけることって、相手が人形であっても私の思い上がりであったのかもしれません。
似合うだろうと思って似合わなかったのは、自分のファッションセンスの能力内での可不可の問題ですが、似合わないだろうと思って似合ってしまうのは、自分のファッションセンスのそれまでの限界を超えた世界の問題です。
誰でもないお人形さん自身からの声だったのだと私は考えました。
王子様で行こう！ と上のアドヴァイスをそのままに白タイツを履かせてみました。
白のパンストで足の肌が透けて見えるのはまるっきりダメでした。肌の色を通さないタイツは探しても見つからず、アゾンの袖無し全身スーツを使いました。
うわぁ。（笑）
さらに悪のりして、果物用のプラスティック楊枝を銀と金のタミヤアクリルで彩色して持たせてみました。
「ナイロン卿！ ボクが相手だ！」などと叫ぶ元気な少女騎士を目指したのですが、そうはならずに静かな少女剣士となりました。
「これはこれでっ」（(C)木村先生＠あずまんが大王）
七転八倒の末にようやく何とかサマになったと思い、袖無し全身スーツを買った時にふと思い付いてアゾンで一緒に入手したブラウスと同系色のこのスラックスを履かせてみました。
・・・ごく自然に似合うぢゃありませんか。
私のこれまでの苦労って一体？
まだまだ、アソートの道は深いようです。
また、キャラクターとファッションの組合せの問題もあります。今回は視点を螢子ちゃんに限定しましたが、貴更なら平気で着こなせる組み合わせが、螢子ちゃんでは服に着られてしまい合わない場合もあるのですから。
このブラウスについては、その修辞の「コロニアル風」とは植民地時代っぽいとの意味ですが、映画「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」に出てきたような独立前のアメリカ開拓時代のシルエットの長いスカートがあったら、ぜひアソートを試してみたいところです。
（それって、むしろ貴更の方に似合いそうな予感がします）
今回のブラウスを使った組合せで悩んだことで別ジャンルの趣味での似た悩みをデジャ＝ヴュしました。
オーディオいじりでの、気に入った西ドイツ製スピーカーユニットがあったのですが、それの使いこなしに悩んだことをです。
実にしっかりした造りでタダ者とは思えず、何とか実力を引き出そうとスピーカー・ボックスを大小３回も作り直しました。部屋への設置法も剛性で押さえつけたり、ジルコンサンド入りクッションで浮かせたり、駆動するアンプもいろいろ替えました。
もっと良くしてやろう、本当の魅力を引き出してやろうとムラムラ思わせる部品ってあるものです。
オーディオ評論家の故・瀬川冬樹氏（本職インダストリアル・デザイナー、アンプの設計もされました）が英国グッドマン社のスピーカーユニットAXIOM 80 を初めて見て聴いて、独創的な構造と凄まじい金切り声のギャップに、こんな素晴らしい造りのユニットからこんな酷い音がするはずがない、と発奮して使いこなしの努力を重ね、遂には芳醇な音を奏でるよう調教したという逸話まで思い出してしまいました。
スラックスだと年齢が一気に上がったようなので、貴更を先輩と慕う螢子ちゃんの少女らしさを求めて、白革のショートパンツの時の経験でブラウスの裾で見え隠れする長さのミニのギャザード・スカートを履かせてみました。
本当は白のミニ・スカートが欲しかったのですが、色の薄いものはベージュしか手に入りませんでした。ブラウスのブラウンとの面積比で白っぽく見えるので、予定したイメージからそう離れなかったと思います。
それにしても上のスラックス姿とはまるで別人です。
本人もこの姿が気に入っっているように見えました。
後ろ姿もいかにも少女らしく決まりました。
やさぐれ中。
「きっと私のことを着せ替え人形か何かだと思ってるんだわ、どうせ」
１ケ月も、あれやこれやとっかえ引っ換えして実験体扱いしてしまったことがお気に召さないようです。
確かにこのドレスの細い袖に開いた手首を通すのは難物でした。画像の最初の白スカートになるまでに既にかなりの試行錯誤もありました。
螢子ちゃんには迷惑を掛けてしまいました。
心なしかこの上の画像の後ろ姿でも溜息をついているように見えます。
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檸檬児
'2003-3-2