なんでもない風景
ほたるちゃんは犬には弱いのですがクマは好きです。
家では、縫いぐるみのたれぱんだ相手にゴロゴロしています。（2001年5月4日更新分参照）
AIBO は初期のモデルは犬っぽかったので興味を持たなかったのですが、このモデルはクマをイメージしたというので気に入っています。
ただ、なぜ犬に弱いのか自分では分かりません。思い出そうとするととても悲しい気持ちになるのです。
ベンチでうとうとしていると、２頭がじゃれてきました。
同じモデルでも２頭はそれぞれ性格が違うようです。白いラッテはやんちゃで活発ですぐ甘えてきますし、黒いマカロンの方は控えめです。
「おもちゃなのに本当に何か話しかけようとしてるみたい。人形にも感情があるのかしら」
ほたるちゃんはつぶやくと、何か訳も分からぬ笑いがこみあげてきます。
このモデルをパンダ柄に変身させるキットがあるというので、縫いぐるみ系同人の貴更さんに話を聞いて情報を集めています。貴更さんもその気になって夏に「AIBO 本」を出そうと盛り上がっているそうです。
でも貴更さんをライバル視しているリリアンさんが対抗して「AIDO 本」を出すと言う話にはいきり立っています。
「あの子は麻雀牌でさえ攻め受け本を出しかねない！」と貴更さんは息巻きます。
ほたるちゃんには何のことか分かりません。
貴更さんが以前「クマのプーさん」本を出そうとした時のことがふと思い出されます。
小説を読んで感動した貴更さんが「クマのプーさん」同人誌を出そうとせっかく原稿まで仕上げたのに、どこの印刷所でも断られたと貴更さんは憤慨していました。
そんな本を印刷したらアメリカの遊園地からたくさん書類をかかえた弁護士が駆け付けて来て権利を主張して訴えられるから刷れないというのです。
「それなら、『ライオンキング』本、出してやる！ 主人公にはトーンを貼らずに白いライオンってことにしてっ！」と、貴更さんの憤慨のさまを、ほたるちゃんは昨日のことのように思い出します。
「・・・そういえば」
ほたるちゃんはさらに思い出します。
「クマのプーさんの絵の本当のモデルはクリストファー・ロビンのプーさんの縫いぐるみじゃなくって、画家のシェパードさんの息子のクマの縫いぐるみだったんですって。貴更さんが教えてくれたんだ。そのクマさんは息子さんとカナダを旅行中に犬に襲われて殺されちゃったんですって。あなた達も犬となんかケンカしちゃダメよ」
ほたるちゃんは２頭に語りかけます。語りながらほたるちゃんは涙ぐんでしまいます。
今でもこの瞬間に、どこかの国のどこかの家で新しいプーさんとクリストファー・ロビンが生まれているのかもしれません。
同人サークル「瀬」
檸檬児
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'2002-5-12