最後の大いなる呪文
教授と行動を共にするのはミリアムや使い魔だけではありません。
リラゼルという耳の長い少女がひっそりと付き従っています。
彼女は人間ではないのです。いつも薄着で暑さも寒さも感じず、たいそう身が軽く、人間には分からない言葉で歌をうたい鳥や獣と言葉をかわします。
でも、この世にはリラゼルの仲間はいません。彼女はエルフランドのこの世では唯一の生き残りなのです。
意外にも教授はそんな彼女への心配りを絶やしません。
地上から失われた国エルフランドの少女リラゼルを拾ったのは教授でした。
たった一人で廃墟に倒れていた彼女は息を引き取るところでしたが、教授は彼女の命を救い、リラゼルのいた国エルフランドに帰してあげようと約束しました。
教授にどんな意図があるのかは分かりませんが、それ以来リラゼルは教授とミリアムと共に旅をしているのです。
ミリアムはリラゼルを教授のペットとからかいますが、リラゼルは教授をしたっているようです。
教授はよくリラゼルを森や深い谷間や浜辺に連れてゆきます。
それらの場所はエルフランドの国境いからたったの数十キロしか離れていないのだそうです。ただ、何かの条件が揃わないとその地への境界を越えることが出来ないのだといいます。
リラゼルは境界のかなたから聞こえてくるエルフランドの角笛に耳を傾けます。
ある時そんなリラゼルの後ろ姿を眺めながら、教授はミリアムにリラゼルがエルフランドに還る時、世界は滅びると笑いながら語ったことがあります。
それならその時はずっと先のことだわとミリアムは笑い返しました。
同人サークル「瀬」
檸檬児
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'2002-3-6