冬のソナタ 最終回

2015年04月01日

 ネタは物凄い人気と噂に聞いた韓流ドラマ「冬のソナタ」です。
 実物を観たことはありませんが、ヨン様と言うメガネのイケメンが主人公、彼は記憶喪失らしい、白いマフラーがキーアイテムとのことでした。

 韓国映画なので当然のように最終回は壮絶な銃撃戦の場面で始まります。
 記憶喪失の自分を養ってくれていた娘が邪悪な敵の日本軍に捕らえられ、それを救い出そうと仲間達と共に最後の決戦の場に挑んだヨン様!

 素手で日本兵を引き裂く心強い仲間達は一人、また一人と敵に殺されてゆき、ついにただ一人になったヨン様が隠れた瓦礫の山に完全武装の敵の円陣が迫る。
 日本軍のジープが近くにあるのを目にし、素早く飛び出すと稲妻のように左右に身をかわして弾幕を掻い潜り、ジープに飛び乗るや装備された重機関銃2丁を両脇にかかえて仁王立ちになる上半身裸のヨン様!

 あっけに取られて立ち竦む日本兵を見据えるや、「うわぁあああっ!」と叫びながら両脇の重機関銃をかかえたまま嵐のような銃撃を開始し、全身を回転させながら周囲を薙ぎ払うヨン様!
 全弾を撃ち尽くし、カラカラと空転する重機関銃をジープから投げ出した時、周りを囲んでいた日本兵は白人兵も黒人兵も朱に染まって全滅していた。

 突然訪れた静けさに太い息を吐くヨン様。
 娘が捕らえられているという敵のアジトに向かおうと一歩踏み出した時、手前の瓦礫が下から盛り上がり、カブトを付けた武将が起ち上がる。
 トヨトミヒデヨシのカブトを頭に乗せ、白いフンドシ1つの裸の巨漢は口を歪めて嗤う。
「よくここまで辿り着けたな、ヨン様! だがそれもここまでだ!」
 敵大将の股間の白フンドシが風にはためく。

 突然、激しい頭痛の発作がヨン様を襲う!
 あれはフンドシではない。自分を養い愛を誓った娘が手編みで作ってくれたぬっくぬくのマフラーではないか。
 見間違えるはずがない。娘が日本軍に連れ去られた時に娘と共に持ち去られた純白のマフラーなのだ!

 頭痛と記憶の奔流に頭をかかえてよろめき跪くヨン様。
「どうした。このマフラーに見覚えがあるかのかっ! これを持っていた女は今ではワシの女よぉっ! 悔しがって死んでゆくがよいわ」
 男はフンドシから南部式拳銃を抜き出すとピタリとヨン様に狙いを付ける。

「ヨン様!」
 突然、物陰から黒い塊が飛び出すや銃を握る男の腕にむしゃぶりつく。
 黒いメイド服を身に纏った娘だった。
「ぬっ、女ぁっ!」
「逃げて、ヨン様!」
 忘れがたいその声にヨン様ががばと身を起こした時、銃撃音がこだました。
 般若のように顔を歪め両腕で男の銃をその手ごと鷲掴みしているのは連れ去られた恋人だった。
 娘は二発目、三発、四発と掴んだ指で引き金を押し、その銃弾を我と我が腹へと打ち込んでいたのだ。
「き、貴様、何を!」
 男が呻いた時、銃からカチッ、カチッと虚しい音が響き、そして娘は崩れ落ちた。弾は撃ち尽くされたのだ。

「ヨン様・・・わたしは・・・」
 のけぞった娘の白い顔がヨン様を向き、そこで言葉は途切れた。
 全てを想い出した。
 記憶を失った自分の面倒をみ、共に暮らし、愛を育んだこの娘はヨン様の実の妹だったのだ。
「うおぉおおおっ!」
 絶叫と共にヨン様は巨漢に突進し、掴もうとしたしたその腕を振り払って身をかがめ、両足を絡めて相手を瓦礫の上に背中から叩きつける。
 きつい角度で折り曲げた相手の片足を両腕で引き寄せながら絶叫するヨン様!
「ヨーンッ!!」
 ヨン様の必殺技、ヨンの字固めだっ!
 六つに割れたヨン様の腹筋がダイナモのように震え、汗が光る。
 見る見る巨漢の膝が裂け、骨が突き出し、軟骨が裂け脂が噴き出す。
 男はカブトをかぶった頭を左右に振り回して悲鳴を上げ続けた。が、ヨン様の咆哮と攻撃が止むことはなかったのだ。

 冬の風に瓦礫が笛のような音を奏でていた。
 その風の細い音の他は静寂が広がる瓦礫の間にヨン様はたたずんでいた。肉片と骨とが散らばる血溜まりから赤く色づいたマフラーを引きずり出し、首に巻くヨン様。
 娘の亡骸をかかえあげると、ヨン様は西に向かって歩き始めた。

 冬のソナタは終わった。
 だが、太白山脈を越えて西に進めば春のソナタが、さらにタクラマカン砂漠を越えれば夏のソナタが、そしてアルプス山脈を越えればそこにはイングリッド・バーグマンが大きく腕を広げて待っていることをヨン様は知っていたのだ!
 ヨン様は歩き続ける。

 完

 おそらく実物の「冬のソナタ」は多少これとは異なっているかもしれません。

 実は、これも観たことがなかった有名番組の「ガンダム」で勝手に作ろう最終回! をやろうか、とも思っていたのですが。
 最終回で制御が外れて暴れまわる首無しガンダムを抑えようと女子プロゴルファーのローラ・ボウが球形ロボットのハロを撃ち込み、首の穴にホールインワンしたハロが運転手の安室と最後の一線を越えてしまい、メカと生体とが融合したガンダムがバイオ化したニュータイプに変身するという他愛も無い話でしたが・・・発表しなくて正解だったかもしれません。





同人サークル「瀬」
檸檬児

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2016-12-15