ロッキー・ホラー・ショウ (The Rocky Horror Picture Show)

1975年　イギリス　ジム・シャーマン監督

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　余りに有名過ぎる怪作です。
　元々はロンドンの小劇場での舞台ミュージカルとして始まったものが、映画化されたものです。

　筋を紹介するのもアホくさくなる程の、全編がミュージシャンのプロモーション・ビデオのごとき感覚全開のいかがわしいイメージの連続です。
　悪ノリと倒錯とお下劣のテンコ盛りで、それが中だるみもせずに最後まで続くのも感動ものです。

　一応、物語の筋を紹介します。ネタバレですが筋なんてバレても問題はないと考えます。
　若いカップルのブラッドとジャネットとは恩師のスコット博士に会いに車を走らせますが、雨の中でエンコしてしまい、あからさまに怪しげなお屋敷に電話を借りに雨宿りします。
　フランケンシュタインの映画に出てくるような傴僂の召使リフ・ラフに導かれて邸内に入ると、道路で擦れ違った怪しいバイクの一団のライダー達がドレスアップしてラインダンスを踊っていました。
　屋敷のメイドのマジェンダは召使のリフ・ラフと兄妹の間柄とのことですが、正統メイド・ファンが憤死しそうなフレンチ・メイドのコスチュームのアバズレで家事そっちのけで踊りに加わったりしています。


　さすがにヤバいと思ったカップル２人が逃げようとしたところに現われるのが屋敷の主人のフランクン・フルター博士です。
　ガーター・ベルトの似合う筋骨隆々たる露出狂のマッド・サイエンティストです。
　彼の研究室に案内され、筋肉モリモリの美男人造人間ロッキー（パンツ一丁）の誕生に付き合わされます。ロッキーは愚鈍ですが純真な良い若者でした。
　そこから先はフランクン・フルターのやり放題で、寝ているジャネットに夜這いを掛けたのはいいとして（いいのか？）、寝ているブラッドに夜這いを掛け戴いてしまいます。
　逃げ出した人造人間ロッキーを今度はジャネットが誘惑したり、スコット博士のバカ息子のエディーが暴れたのでフランクン・フルターが舟盛りにしたり、さらにはそこに車椅子姿のスコット博士まで加わって全員網タイツ姿で踊り狂い狂乱の度を高めてゆきます。

　ところが、主人のフランクン・フルターもリフ・ラフとマジェンダの召使、メイド兄妹も実はトランスセクシャル星から地球を調査に来た(???)異星人だったのです。
　地球での愉快な生活に馴染み過ぎ、面白おかしい破目を外し過ぎたフランクン・フルターに愛想が尽きたリフ・ラフとマジェンダ兄妹は唐突に銀色に輝く袖無し宇宙人スーツに身を包み、リフ・ラフなんて傴僂の背中までシャンと伸ばして、光線銃をかまえてフランクン・フルターを抹殺しようと迫ります。
　ここで涙無しには観ることが出来ない愁嘆場を経て、兄妹宇宙人は屋識ごと空に帰り、地にはボロボロになった３人の地球人が呆然と残されます。（ガーター・ベルト姿のまま）


　なぜ、こんな作品のメイドさんを取り上げたかと言うと、一箇所心に残るシーンがあるのです。
　冷酷な宇宙人に戻ったリフ・ラフとマジェンダ兄妹がいざ空に帰る前に、ふと懐かしそうな顔をするのです。
　想い出すのはフランクン・フルターをご主人とし、彼に仕える召使とメイドとして過ごした日々の中の狂乱パーティーの夜、兄妹二人で手を取り合って踊り合った場面でした。
　かってのヴィクトリア朝のお屋敷でも、年に僅かにある休息の日は召使達の無礼講として破目を外して呑んだり踊ったりして楽しい一日を過ごしたと聞きます。
　むろん、この変態兄妹の使用人達がヴィクトリア朝の使用人達のように、日々きついご奉仕をしていた訳はありませんが、それでもこのシーンだけは、この倒錯映画の中で心が穏やかになる瞬間でした。


　なお、映画オープニングの真っ黒の背景の中に浮き上がってセリフと共に動く真赤な唇はメイドのマジェンダのものです。
　トランスセクシャル星から来たヤバい３人組が巣くっていた屋敷はウィンザー城に近いオークレイ・コートで、19世紀のものです。現在はホテルとして営業していると言います。

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