こちらのスペースの撮影は行いませんでした。入手した作品の紹介に留めておきます。
他意があるわけではなく、このサークルさんの場合は彩色自作ヘッドが主たる頒布物で、スペースの上にはボディーのない完成ヘッドが並んでいるのです。
私には何の抵抗はないのですが、人形ファンの中には改造や交換などでヘッドを外したり、手足を外すことに抵抗を覚えるかたもおいでです。
いい悪いの問題ではない微妙な問題なので、このような形で扱わせて頂きました。
このヘッドはDoll Show の前日にサイトで公開された頒布予定作品を見ていて、突然デンパが飛んできて私の心をとらえた作品です。
無事に入手でき、オビツボディーに乗せドレスをあつらえて落ち着いたところです。右手に持っているのは妄想隙間産業さんの作品で蝙蝠の羽根を差した「DRAGURA 赤ワイン入りグラス」です。トップページの黒猫屋雑貨店さんとジョイント参加しておいででした。
おまけ
「あ、ほたるちゃん。新しく来た人の歓迎会やってるよ。きれいな人ねえ」
「・・・貴更さん、ここ空気の色が違います。それに一緒にお話しているあの人って」
「そぉ？ でも挨拶しとこっ。お名前も知りたいし」
「待ってください！ 行ってはいけません」
「どうしたの？ 怖い顔して」
「貴更さん・・・ああなりたいのですか」
「ああって？」
「主よ、お守りください。主よ、このもの達の手から私をお守りください・・・あぁ、主よっ」
「ミリアム、このかた声がとても細くなってるわ。飲み物を差し上げてよいかしら？」
「飲まないわ、その人。何をあげても飲みも食べもしない。泣くか、泣いてない時は祈ってばかり」
「そお？ さっ、あなたこれを飲みなさい。唇がこんなに乾いている」
「やめてっ、そんなけがれた飲み物で私を誘惑しないで。立ち去って！ 幻覚。あなた達は存在しない」
「いるわ、ここに。のどが乾いて声もつぶれそう。さ、わたしの目を見て」
「あ・・・あぁぁあああ！・・・」
「ね？ おいしいでしょう？ 泣くと血がからくなる。祈ると血が酸っぱくなる。何もかも忘れてお飲みなさい」
「そんなことすると、正気にもどってから半狂乱になるわよ、その人」
ミリアムの笑い声がその言葉に続きます。
虚ろな目で紅い飲み物をむさぼるように飲み尽くした囚われのシスターの口から漏れた言葉は、ミリアムの笑い声に掻き消されます。
「・・・けて・・・助けて、フローライト」
「最後は主の名ではなくて、フローライトの名を呼ぶのね」
篭の中のシスターを覗き込んでいた黒髪の少女は興味深そうにつぶやきます。
「行きましょう、貴更さん。ここはあってはいけないところです」
「だって、ほたるちゃん。あの人」
「忘れましょう、貴更さん」
「つかまって変なことされてるのよっ！ 助けるわ！」
「貴更さん、わたしの目を見て！ 忘れてください」
「え？ ほたるちゃん、その目は」
「ん・・・あれ？」
「貴更さん、どうしたんですか？」
「なんか今一瞬、クラッてなったの。何でもない。もうDoll Show は全部見終ったわね」
「はい、素敵なドレスも一杯見ることが出来ましたし、小物もお小遣いで買えました」
「じゃ、秋葉原にねえ、とってもおいしい本格インド・カレーの店を見つけたの。土日と祝日はカレーがバイキングよ。お替わりし放題でナンもお替わりできるの」
「わぁ、素敵です。秋葉原にもいいご飯のお店があるんですね」
「秋葉原をナメちゃだめよ。日本一おいしい卵丼のお店やトンカツの老舗やゴスロリのジュエリーショップもあるのよ」
「わぁ、見たいです。早く行きましょう」
「待って。最後にまりちゃんに挨拶していきましょ」
「まりちゃん？」
二人は出入口横のDoll Show 事務局に立ち寄ります。
机の上には市松人形程の大きさの西洋人形が立っています。
「Doll Show 事務局で一番エラいのが、このマリちゃんなの。一番最初に言ったでしょ、I-DollとDoll Show には大きな違いがあるって。入口のそばの机でマリちゃんが見張っている方がDoll Show よ」
「あの・・・本気ですか？ 貴更さん」
「あたしはこれまでずっとそう区別して来たけど。さっ、挨拶しましょ」
まりちゃんはそんな二人を優しげな瞳で見詰めていました。
おまけのおまけ
「あ、シャルル坊っちゃま、もうお休みになるのですか」
「お帰り、ほたる。今お風呂からあがったとこ。お休みどうだった？」
「友達と遊びに行ったんです。とても楽しかったですよ。坊っちゃまがお休みになる前に戻れてよかったです」
「？」
「はい、お土産です」
「え、わぁ！」
「坊っちゃま、ねこむしがお好きでしょう？ 今日はストラップが出ていたんです」
「ありがとう、ほたる。いいの？」
「もちろんです」
「あ、ピンクのねこむしクッションってあった？」
「残念ですが今日はありませんでした。シンシア様にですね」
「うん、シンシアったら何でも僕とお揃いのことしたがるんだ。シンシアはラベンダーのポプリのクッション持ってるくせに」
「そうですね。それだけ坊っちゃまのことお好きなんですよ。坊っちゃまの方はどうなんです？ ラベンダーの香りがするとシンシア様だって、坊っちゃま慌てられますね」
「ほたる」
「はい」
「・・・僕、もう寝る」
「よい夢を見てくださいね」
微笑みを浮かべたほたるを後に、シャルル坊っちゃまは赤い顔をして自分の部屋に入ります。
ドアを開けたところで、シャルル坊っちゃまは振り返ります。
「ほたる」
「はい」
「お土産、ありがとう」
おしまい
このねこむし携帯電話ストラップは、関東んまいもの会さんの作品で、本来は人間の使用の為にもう一本ピンクの透明ミニベルトが付いています。今回は撮影の都合で一旦外しましたことをお詫びします。
身に付けているとゲームがバリバリに強くなるという伝説がある一品です。
檸檬児
'2003-5-1