ひずみちゃん
2006年のDoll Show でからすねこさんにて初めてお目見えして、次のDoll Show で頒布された「ひずみ」ちゃんです。
ひずみちゃんはなんとも不思議な魅力の娘さんで、着せ替えをしてみて驚いたことは色々なタイプのドレスも平気で着こなすということです。着る服を選びそうだと先入観で思っていたのですが。
23cm 用のしっかりとした造りの着物はブライス用にいいものが多いので着せてみましたところ、怖いアニメのヒロインみたいになりました。ちょっと似合い過ぎです。
この世と異界との接点「歪の門」の番人とでもいった風情です。
独りで不思議少女をやらせてはあんまりですので、彼女が心を許す子も機会を見つけて紹介する予定です。
和室に寝そべるひずみちゃんです。
奇麗な黒の長髪が広がるさまを見たかったのですが、横溝正史原作の｛いつも間に合わない）私立探偵映画のポスターのようになってしまいました。
街の雑踏の中で出会った和服姿の奇妙な少女に引かれて丸ノ内線に乗ったはずなのに、電車が揺れて電燈がしばしまたたいて消えて闇に落ち、再び電燈が点いた時には古めかしい車内にいました。
床も窓枠も木製です。
乗客の様子も妙に時代掛かっています。
終点の驛に着いて少女に導かれるままに降りやうとすると、その地下驛も様子が變です。地下鐵の外装も見たことのない黄色の車輌です。
何もかも古めかしい世界の中で、ふとホームの壁に嵌め込まれた鏡に気が付きました。
その鏡に映っていた自分の乗ってきた地下鉄は見慣れた赤い丸ノ内線の車体でした。
鏡に映る乗降客の姿も弐〇壱世紀の人々の姿です。
しかし鏡の正面から覗き込む私の姿は映っていないのです。
生唾を飲み込み、震えながら私は身をずらし鏡の中で私の横に映っている筈の、あの少女の姿を求めました。
その少女の姿は
別パターンを考えました。
韓国ホラー「Red Eye」の中のシーンのあからさまなパクリです。
この日最終の地下鉄にギリギリで飛び込み、ドアが後ろで閉まって走り出したことに安心した瞬間、列車内の様子に気付きました。
この車輌の中には誰も乗っていません。後ろの車輌を連結器のところのガラス越しに覗いても誰も乗っていないのです。
私一人の貸切りです。
めったにないことなので鞄からポラロイドを取り出して記念に撮っておくことにしました。
明日は会社で自慢してやろうとも思いました。
ファインダーを覗いた時、暖房され密閉された車輌なのに冷気が吹き、背中の毛が逆立ちました。
周りを見回しましたがどこもおかしなところはありません。
明るい蛍光灯で照らされた車内に私一人を乗せた地下鉄が鼓動のような音をたてて闇の中を走り続けているだけです。
もう一度ファインダーを覗いてレリーズを押しました。
取り出した印画紙に画像が浮かび上がってきます。
妙に暗い画面です。
画像が完全に現れました。
私はその画像を見つめて凍りつきました。
それはこの地下鉄の車内ではありません。
そして誰もいないはずの車内に一人の少女の姿が写っています。
火花がはじける音がし、天井の蛍光灯がふいに瞬き、一斉に消えました。
それと同時に冷気が吹き寄せてきました。
闇の中を列車は鼓動のような音をたてて走り続けています。
ふいに蛍光灯が一斉に点きました。暗闇に慣れた目が元通りの明るさに戻った眩しさにくらみます。
目の前に少女が立っていました。
檸檬児
'2007-3-18